【リリース】1970年8月(アルバム『Layla and Other Assorted Love Songs』収録)
【作詞・作曲】Eric Clapton/Jim Gordon
【構成】前半は力強いギターリフが印象的なロック・ナンバー/後半はピアノ・コーダでドラマチックに展開
【背景】エリック・クラプトンが深い恋慕を抱いた体験をもとに書き下ろした楽曲で、ロック史に残る名曲として知られる
「いとしのレイラ」を最初に耳にした瞬間、ギターのイントロが心を強く掴みました。
レコードの針が溝に触れると同時に立ち上る、あの切ない響きのギター。古びたスタジオの空気ごと吸い込むような重厚感が、今でも耳に鮮やかに残っています。
エリック・クラプトンが背負っていた失恋の痛手と、デュアン・オールマンの心を揺さぶるスライドが交わります。
二人のギターはまるで言葉のない対話を展開し、そのコール&レスポンスに心が震えて、ヴォーカルの切実な声が重なるたび、胸の奥が苦しくなります。
楽曲は二部構成で、前半のアップテンポなロックから後半の抒情的なピアノとストリングスへと移行します。
静かなピアノのアルペジオは、一度訪れた激情を優しく包み込む毛布のようで、サビを超えて訪れるコーダは、聴く者を深い余韻へと導き、エンディングを無意識に求め続けます。
リズム隊の存在感も見逃せません。ジム・ゴードンのドラミングはクールでありながらも熱を失わず、各ビートの間にある「間」を引き締めています。
さらにカール・レイドルのベースラインは、基盤を揺るがすことなく、音の隙間にさりげない遊び心を潜ませています。
歌詞に込められた「レイラへの渇望」は、恋愛の普遍的な痛みと希望を同時に映し出し、届きそうで届かない感情は、クラプトン自身の実体験を通じて生々しく胸に迫ります。そこに自分の片想いや心の傷を重ね、いつしか歌と一体化してしまいます。
1969年、アビー・ロードのスタジオで録音されたあのセッション。響き渡るアンプとマイクの微かな音まで拾い上げるレコーディング技術が、演奏のリアリティをさらに引き立てました。
スタジオの暗がりで生まれたこの名曲には、そこに居合わせた全員の情熱と祈りが刻まれているようです。
時を超えて響き続ける「いとしのレイラ」は、まるで生き物のように息づいています。
ライブで演奏されるたびに新たな火花を散らし、聴く者の感情を何度でも揺り動かし、その普遍的なエネルギーが、ロック史のひとつの頂点として今も輝き続けています。
愛のもろさと強さ、友情の深さと儚さ。それらをすべて内包したこの一曲は、デレク・アンド・ザ・ドミノスという名前以上の物語を語り継いでいます。
初めて耳にした瞬間から、心のどこかで永遠に鳴り止まない旋律が始まるでしょう。
「いとしのレイラ(Layla):デレク・アンド・ザ・ドミノス」