エンゲル係数とは?
エンゲル係数は、家計の支出のうち「食費」がどれくらいの割合を占めているかを示す数字です。
いわば、暮らし方や家計の余裕度をざっくりと映し出す「暮らしの鏡」のような指標といえます。
計算方法はとてもシンプルです。
エンゲル係数(%)= 食費 ÷ 消費支出 × 100
例えば、1か月の消費支出(家賃・水道光熱費・通信費・食費など)が30万円で、そのうち食費が9万円なら、
9万円 ÷ 30万円 × 100 = 30%
この場合、エンゲル係数は30%ということになります。
一般に、この数値が高水準であるほど「生活の中で食費が重くのしかかっている状態」と解釈されやすく、逆に低いほど「食費以外にもお金を回せる、比較的ゆとりある家計」とみなされる傾向があります。
この考え方を提唱したのが、19世紀ドイツの統計学者エンゲルです。
以来、エンゲル係数は世界各国で、生活水準や暮らし向きをざっくり把握するための古典的かつ基本的な指標として使われ続けています。
日本で、なぜ今、エンゲル係数が高水準なのか?
最近、「日本のエンゲル係数が高水準になってきている」とニュースや統計資料で取り上げられることが増えました。
なぜ、いまエンゲル係数が上昇しているのでしょうか。
いくつかの要因が重なっています。
1. 食料品の値上げがじわじわ家計を直撃
まず大きいのが、食料品価格の上昇です。
・円安
・小麦や油など原材料価格の高騰
・人件費やエネルギー費の上昇
・物流コストの増加
こうした要因が積み重なり、スーパーの商品は全体的に値上がりしています。
以前は100円で買えた食パンが130円前後になっていたり、卵や牛乳、冷凍食品など、日常的に買うものほどじわじわと負担が増えています。
「買っている量や品目はそんなに変えていないのに、レジで支払う金額だけが増える」という状況が続くと、自然と食費の割合が高まり、エンゲル係数も上昇してしまいます。
2. 外食・中食が日常化し、単価が上がっている
共働き世帯の増加や長時間労働、家事の時短ニーズなどから、
・レストランやカフェでの外食
・コンビニやスーパーのお惣菜、テイクアウト(いわゆる「中食」)
を利用する人が増えています。
外食や中食は、自炊に比べて人件費・店舗費用などが上乗せされている分、1食あたりの単価が高くなりがちです。
例えば、平日のランチを毎日外食にすると、
800円 × 20日 = 1万6千円
そこに、週に数回の夕食のテイクアウトや週末の外食が加われば、あっという間に月の食費は数万円単位で増えていきます。
こうしたライフスタイルの変化も、エンゲル係数を押し上げる要因になっています。
3. 高齢化・単身世帯の増加で、相対的に食費が重くなる
日本では、高齢者世帯や一人暮らしの単身世帯が増えています。
こうした世帯では、どうしてもエンゲル係数が高水準になりやすい傾向があります。
理由としては、
・持ち家で家賃負担が比較的小さい
・子どもの教育費などが発生しない
・収入自体が年金などで限られている
といった点から、「そもそもの支出総額が少ない中で、食費が占める割合が大きく見えやすい」ためです。
例えば、年金月10万円の高齢者が、そのうち4万円を食費に充てているなら、
4万円 ÷ 10万円 × 100 = 40%
エンゲル係数は40%となり、数字だけ見るとかなり高水準です。
実際には、他の支出が少ないからこそ相対的に食費が大きく見えている、という面もあります。
エンゲル係数から何がわかる?数字の「読み方」のポイント
エンゲル係数は、私たちの暮らしぶりを映す「暮らしの鏡」ですが、数字だけを切り取って「高い=貧しい、低い=豊か」と単純に判断するのは危険です。
例えば、
・食へのこだわりが強く、あえて良質な食材や外食にお金をかけている
・旅行や趣味にはあまり使わず、「食」が最大の娯楽になっている
といった家庭では、意図的にエンゲル係数が高水準になる場合もあります。
逆に、食費を削りすぎて健康を損なえば、本末転倒です。
大切なのは、
・「収入に対して、無理のない食費になっているか」
・「望んでいる生活スタイルと、実際の支出配分は合っているか」
といった観点で、自分の家計を見つめ直すことです。
エンゲル係数は、そのための「ざっくりとした物差し」として役立ちます。
これからの家計管理とエンゲル係数の付き合い方
物価上昇や少子高齢化など、私たちの生活環境はこれからも変化し続けます。
そのなかで、エンゲル係数は今後も「お金の使い方」と「暮らしの質」を考えるうえでのヒントになります。
・家計簿アプリや銀行の明細で、月々の食費をざっと把握する
・手取り収入や消費支出と照らし合わせて、だいたいのエンゲル係数を計算してみる
・外食・中食・自炊のバランスが、自分の理想や体力・時間と合っているか見直してみる
こうした小さなチェックを続けることで、「なんとなくお金が足りない」というモヤモヤの原因が見えやすくなります。
エンゲル係数は、単なる統計用語ではなく、毎日の献立や買い物、働き方や暮らし方まで映し出す「暮らしの鏡」です。
数字そのものに一喜一憂するのではなく、「いまの家計と生活スタイルを見直すきっかけ」として、少し意識を向けてみると、新しい発見があるかもしれません。