ドラムのシャッフルビートを探求してみる【1】

ドラム趣向
シャッフルビートの概要

シャッフルビートは、まるで波が立つ川のように揺れるリズムです。
もともとブルースや初期のR&Bから生まれ、ジャズまで受け継がれたこのビートは、8分音符を3つの連符に分割し、打点を「タッ・タッタ、タッ・タッタ…」と跳ねさせることで独特の推進力を生み出します。
均一なストレート8分に比べて、空間に生まれる余裕が演奏者にも聴き手にも余韻を与え、音楽に温かみと活力を与えます。
ロックやファンクでも採用され、時代やジャンルを超えて愛され続けているのは、このリズムの「呼吸する感覚」が大きく関与しています。

シャッフルの核心はハイハットの刻みであり、通常は右手でオープンクローズを交えながら3連符の最初を細かく刻み、まるで心臓の鼓動のようにリズムを感じさせています。
スネアは2拍目と4拍目のバックビートを確実に打ち込みながら、裏拍のゴーストノートを柔らかく忍ばせることで、音符の“間”にさらなる揺らぎをもたらします。
バスドラムは歌やベースのフレーズに合わせてひとつかふたつアクセントを加えると、グルーヴ全体がより深い盛り上がりと解放を交互に繰り返すようになります。

このリズムを体得するには、まずメトロノームを3連符モードに設定し、「1-タ-タ、2-タ-タ…」と声に出して歌いながらスティックを動かす練習が効果的です。
最初はフットペダルでしっかりダウンビートを刻み、その後、ハイハットだけで3連符を鳴らし、慣れてきたらスネアのバックビートとゴーストノートを加え、最後にバスドラムで仕上げをしていきます。
ひとつずつレイヤーを積み上げていくことで、シャッフル特有の「浮遊するグルーヴ」を手に入れることができます。

ドラムのシャッフルビートは、単なるリズムパターン以上のもので、歴史を通じて、音楽を揺らし、人々の心を動かします。それを体験し、演奏し、仲間と共有するたびに、また新たな発見が待っているはずです。

 

シャッフルビートの名曲

Isn’t She Lovely」スティーヴィー・ワンダー
Isn’t She Lovely by Stevie Wonder

1976年に発表された「Isn’t She Lovely」は、Stevie Wonder/スティーヴィー・ワンダーが誕生したばかりの娘に向けた喜びの賛歌です。
軽やかに跳ねる旋律の背後には、新たな命への感動と誇りが深く込められており、歌詞の一語一語に、父としての優しさや喜びが漂い、聴くたびに温かい気持ちが胸に広がります。

この曲のリズムの核は、12/8拍子のシャッフルビートで、通常の8分音符を3つずつに小分けすることで、ゆったりとした“揺らぎ”が生まれ、まるで子守唄のように心地良く身体を揺らします。
ドラムのハイハットが生み出すスウィングと、ベースやキーボードのアクセントが絶妙に交わり、優しい推進力となって全体を支えています。

イントロでの「Isn’t she lovely, Isn’t she wonderful…」の繰り返しは、聴く者をその祝祭的な雰囲気へ引き込みます。
繰り返しの美しさは、まるで大切な人の笑顔を何度も振り返るような安心感をもたらし、スティーヴィーの声はあちこちで即興的にメロディを色付けし、シンプルなフレーズに無限の表情を与えています。

曲の中には、赤ちゃんの笑い声や口笛、心地良い手拍子のようなパーカッションも隠れていて、こうした“日常の音”がスタジオ録音の硬さを取り去り、アットホームなリビングで奏でられているような臨場感を作り出し、音と音が優しく寄り添う様子は、家族の団らんを垣間見るような親密さを感じさせます。

「Isn’t She Lovely」は、誕生したばかりの幸福を祝う賛歌であり、同時に私たちの日常にひっそりと寄り添ってくれる存在です。
通勤電車の中や、寝る前のイヤフォン越しでも、耳を傾けるだけで自然に頬が緩んでしまうでしょう。
シャッフルの心地良い揺れが、忙しい日常を少し穏やかにしてくれるのです。

 
Isn’t She Lovely:スティーヴィー・ワンダー
 

シャッフルビートlesson【1】

 

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