ドラムのシャッフルビートを探求してみる【3】

ドラム趣向
シャッフルビートの概要

シャッフルビートとは、3連符の中間を休符にしたリズム感で生まれる独特の揺れとノリを生む手法です。
楽譜上は8分音符で書かれることが多くても、演奏感覚は「3つに分けたうちの1・3」を強調する三連の感覚が核になります。
聴くと「タッタ、タッタ」「ダッタ、ダッタ」といった繰り返しが浮かび、ブルースやカントリー、ロック、ファンキーなポップスで心地よいうねりを作ります。

記譜と実際の演奏感のズレを理解することが重要です。
楽譜上は単純な8分音符の連続に見えても、実際は「1と3をつなぎ、2を間に抜く」三連の中抜きを意識して演奏します。
英語ではswingやshuffleと呼ばれることがあり、シャッフルビートはスウィング系の一種ですが、より四つ打ちのロックやR&Bに馴染みやすい直線的なグルーヴが特徴です。

ドラムの観点では、ハイハットやライドシンバルで三連の頭と中を刻み、ベースドラムとスネアが応える分担を作ると全体のグルーヴがしっかりします。
スネアドラムのアクセント位置、ハイハットの閉め具合や開放量、ゴーストノートの使い方で「揺れ」の質は大きく変わります。
例えばハイハットを少し開いて裏拍を少し明るくすると、よりファンキーなシャッフルに、逆にタイトに閉めるとブルージーな硬さが出ます。

初心者向けの練習法としては、メトロノームを「3連の1だけ」に合わせてゆっくりから始めるのが効果的です。
口で「タッタタッタ」と三連を声に出しながら右手でハイハット、足でバスドラムという基本パターンを固めてください。
慣れてきたらメトロノームを裏拍(または2拍目)に置き、肩の力を抜いて反復することで体にリズムが入ります。

中級者向けには、シャッフルのバリエーションを試してみましょう。
例えばハーフタイムのシャッフル(テンポ感を半分に感じさせる)や、16分系の細かいゴーストノートを混ぜたニュアンスのあるパターン、スネアのディレイやアクセントの変化で独自の色を作る練習がおすすめです。
フィルやブレイクを入れる際は三連の感覚を崩さないことを意識してください。

よくある間違いは、三連の中抜きを理屈だけで行いタイミングが固くなること、あるいは音量やアクセントの調整を怠ることです。
シャッフルは機械的なテンポ感ではなく「揺れ」と「呼吸」が命なので、ダイナミクスと微妙なタイミングの前後を練習して自然なグルーヴを目指しましょう。

実践的な上達法としては、代表的なシャッフル曲を聴き、手足で模写する「耳コピー」を習慣化するのが最短です。
メトロノーム+声出しで基礎を固め、好きな曲のフレーズを逐一真似して自分のフィールに落とし込んでください。
シャッフルビートはリズム感とグルーヴ感を深める絶好の訓練場なので、根気よく反復することで確かな向上が実感できます。

 

シャッフルビートの名曲

Walk This Way」エアロスミス
Walk This Way by Aerosmith

Aerosmith/エアロスミス の「Walk This Way」は1975年のアルバム『Toys in the Attic』で放たれた一撃的なロックナンバーで、軽快なヴァースとエネルギッシュなサビが交互に襲いかかるリズムで聴き手を一気に惹きつける楽曲です。
この曲は繰り返しのフレーズとボーカルの語り口によって「日常の小さな物語」をロックの活気に変える力を持ち、後にヒップホップとの融合で再評価されるなど、ジャンルを超えた影響力を持つ作品として知られています。

曲の中核を担うのは「鋭いギターのリフ」と、それを支える「リズム隊の的確なアタック」です。
イントロから奏でられるギターの短いフレーズはメロディを超えて曲のキャラクターを決定し、ベースとドラムがその合間に入ることで「隙間」を生み出します。
その隙間に入るスネアドラムのスナップやハイハットの細やかなニュアンスが、歌詞の口語的な語り口と組み合わさり曲に生々しさと即興性を与えています。

右手がハイハットで、まっすぐに刻む8分の感覚は曲全体に推進力をもたらし、その上でスネアの2拍目と4拍目が締まりを作っています。
特徴的なのはバスドラムのアクセントの置き方で、1拍、3拍、さらに3拍の裏や細かい付点、16分寄りの位置にアクセントを加えてグルーヴを作り出し、単なる均質な8ビートではなく「歪んだ前進感」を生み出す点です。
イントロでのハイハットの開閉やベースの少しの突き出しが、曲に特有の「跳ね」と「押し」を与えています。

このビートの核心は「予測のずれ」にあります。手が刻む安定したハイハットが「均等な土台」を作り、足の微細なずれがタイミングの輪郭をあいまいにしつつも中心を保つことで、演奏全体がバンドのグルーヴに合わせて伸びやかになります。
Joey Kramer/ジョーイ・クレイマー の演奏ではハイハットを通常とは異なるタイミングで開く小さな仕草があり、これが曲の冒頭で聴き手を惹き込む「耳のフック」となっています。

聴きどころはイントロの「ひと鳴り」と、歌の裏で小さく効くバスドラムの一撃です。
模倣する際はハイハットのタッチと開閉タイミング、ベースドラムの「裏に入る短い突き」を丁寧に捉えることで、単にリズムを再現するだけでなく曲特有の「生きた揺れ」を再現しやすくなるでしょう。
アンサンブルではギターのレイドバックと噛み合う瞬間を意識することで、曲のロックな躍動がより強く伝わることでしょう。

 
Walk This Way:エアロスミス
 

シャッフルビートlesson【3】

 

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