ドラムのトリプレット・ロックビートを探求してみる【2】

ドラム趣向
トリプレット・ロックビートの概要

トリプレットとは、1拍を均等に3つに分割するリズムを指し、ドラムでは通常の8分音符や16分音符とは異なる「三連の感覚」を生み出します。このトリプレットを取り入れることで、グルーヴに揺らぎやスイング感が加わり、同じテンポでも曲の推進力やノリが大きく変化します。

ロックビートにトリプレットを取り入れる一般的な方法は、ハイハット(またはライド)で3連を打ちつつ、バスドラムとスネアで拍の中心を形成するスタイルです。例えば、ハイハットで「タタタン/タタタン…」と3連を続け、スネアを2拍目と4拍目に配置することで、ロックの基盤を保ちながらトリプレット特有の揺らぎを引き出すことができます。
パターンのアレンジ次第でオープンハイハットやバスドラムのパターンを強調して派手にしたり、逆にコンパクトにまとめて鋭いロック感を表現することも可能です。

実践的な練習方法としては、まずメトロノームを四分音符に合わせ、ハイハットで3連符の均等感を安定させる練習から始めます。
次にバスドラムとスネアを追加して実際のビートに組み込むと良いでしょう。
ノートやフレーズ(タタタ/ンターン等)を併用すると感覚が速く定着し、速度を上げる際には16分音符や8分音符の感覚と混ぜた練習が効果的です。

音楽的な応用として、トリプレットを用いたロックビートはブルース寄りの曲やグルーヴを重視する楽曲に特に適しており、フレーズの終わりやフィルの導入で3連を使用することでドラマティックな効果を狙えます。
まずは、シンプルな3連のハイハットと基本的なスネア配置で安定させ、その後オープンシンバルやアクセント配置、16分との組み合わせなどを試すことで独自のロック感を創出し、表現の幅を広げていくことが大切です。

 

トリプレット・ロックビートの名曲

オー!ダーリン」ビートルズ
Oh! Darling by The Beatles

ビートルズの「Oh! Darling」は、1969年に発売されたアルバム『アビイ・ロード』に収録された、ポール・マッカートニーによって書かれた楽曲で、濃厚で情熱的な歌唱表現と、レトロなロックの感触が共存する一曲です。
曲全体を支えるドラムはシンプルではありますが、緊張感を生む重要な役割を果たしていて、その中心にあるのがトリプレットを基にしたロックのビートです。

ドラムの「トリプレット」は、一拍を均等に三つに分けるリズムで、通常の4分音符や8分音符とは異なる揺れと推進力を生み出します。ロックビートにトリプレットを取り入れることで、ハイハットやスネアの音が微かに「うねる」ようなグルーヴを創出し、歌のピッチやフレージングに寄り添いながら情熱を帯びます。
「Oh! Darling」では、スネアのアクセントとバスドラムの確固たる一撃が、トリプレットの流れを歌の感情に合わせ、全体に押し引きのある活力を与えています。

ハイハットやライドの細かな刻みが三連の感覚を示し、スネアが2拍目と4拍目を強調してロックらしい推進力を保っています。
バスドラムの役割は、トリプレットの中で要所を支えることで、躍動感を一定の重心に戻すことです。
ダイナミクスの操作は、演奏の強弱やフィルの入れ方で三連の流れを崩さずに歌の情感に沿って盛り上げることがこの曲の魅力の核心です。
これらの要素が組み合わさることによって、トリプレットは単なるフィーチャーではなく、曲の感情表現を強化する効果的な装置になっています。

トリプレットを基にしたロックビートは、聴き手に「引き込まれる揺らぎ」をもたらします。
均整の取れた4分系リズムとは異なる微妙なズレと流れが演奏に人間味を与え、ヴォーカルの切迫感や懐かしさを際立たせます。
その結果、「Oh! Darling」は歌とリズムが互いに影響し合い、聴くほどに細部の美味しさが浮かび上がる仕上がりになっています。

ドラムのトリプレット・ロックビートは「Oh! Darling」の情動を下支えする重要な要素であり、技術的には三連の感覚を正確に保ちながらもダイナミクスで揺さぶることが求められ、そのバランスこそがこの曲の魅力を生み出しているのです。

 
Oh! Darling(Abbey Road):The Beatles/ビートルズ
 

トリプレット・ロックビートlesson【2】

 

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