ハイハット・シンバルは、ドラムセット内で最も多目的でリズムの中心となるパーツで、足のペダルで開閉しながら、手やスティックで打撃を加えて様々な音色を生成します。
ハイハットは上下に組み合わさった2枚のシンバルで構成されており、上部はクラッチで固定され、下部は皿の上に置かれているだけの仕組みです。
フットペダルを踏むことで2枚の間隔が変わり、閉じた「チック」音から開いた「シャー」音までを調整できます。
組み立てやセッティングは比較的容易ですが、クラッチ、フェルト、心棒の位置などの細かいパーツ調整が音質に直結します。ボトムを支えるフェルトや傾き調整ネジを用いて音の角度や鳴り方を変えられ、トップとボトムの組み合わせおよび取り付け順も重要です。
サイズや厚さは音色を決定づける大きな要因で、スタンダードサイズは14インチですが、10〜17インチまでのバリエーションがあり、ボトムの方が厚く重いことが多く、トップを薄くするとコントロールがしやすく、踏んだ際の収まりが良くなります。
ハイハットの起源は1920〜30年代に遡り、ペダルを使って一人で複数のリズムを演奏するために発明されました。
演奏においては、開閉具合とペダルのコントロールが鍵となり、ジャンルや演奏者によってセッティングが大きく変化します。
初心者は「指2本分」程度の開きから始めると操作が容易で、踏み方やバネのテンションを調整してレスポンスやグルーヴ感を生み出しましょう。
ハイハットの音は「サイズ・厚さ・素材・トップ/ボトムの組み合わせ」で決まります。
まずは何を重視するか(音の明るさ、レスポンス、サステイン、予算)をはっきりさせてから試奏するのが近道です。
サイズと厚さで狙う音を設定
サイズはピッチやボリューム、サステインに直接関わります。大きいほど低音で余韻が続き、小さいほど高音でレスポンスも迅速です。選択時には用途に応じてインチを決めると良いです。
トップとボトムの役割を理解する
ハイハットは上下2枚の組合せで音が生成されます。
一般的に14インチが標準で、トップを薄め、ボトムをやや厚くすると「コントロールしやすく収まりの良い音」が得られます。
厚さ(ウェイト)と音色の関連
シンバルの厚さはアタック感やピッチに影響し、薄いものは繊細で表現力が高く、厚いものはアタックが強く音量が大きくなります。
厚さが増すとピッチも高くなる傾向があることも覚えておきましょう。
素材・製法とジャンル適合
素材(B20、B8、ブラス)やキャスト/シートの違いで倍音や温かみが変わります。
B20は深く複雑な倍音、B8は明るく切れる音、ブラスは安価で高域寄りという傾向があります。
製法では、キャストは豊かな鳴り、シートは均一でコスト効率が良いです。
素材については、一般的にプロ向けで多く使われるのが、B20(銅80%・錫20%)と、B8(銅92%・錫8%)のブロンズ合金です。
B20は倍音が豊かで温かみのあるサウンド、B8は明るくアタックがはっきりしたサウンドになりやすいとされています。
合金比率の違いが金属の硬さや倍音構成に影響を与え、結果として音色差が生まれます。
製法の違いについては、キャスト(鋳造)シンバルは、溶かした合金を型に流して一枚ずつ作るため、職人の工程や個体差が音に反映されやすく、豊かな響きと深いサステインが得られます。
一方、シート(圧延)シンバルは、板材から切り出して作るため個体差が少なく大量生産向きで、安定した音とコスト面の利点があります。
さらにブラス(黄銅)は、銅+亜鉛の合金で、価格が抑えられる代わりに倍音の複雑さや耐久性でブロンズに劣ることが多く、入門用や特定の用途で使われます。
プロ志向ならB20+キャスト、明るくコスト重視ならB8やシート、予算重視ならブラスという選び方が一般的です。
また、ロック系は明るくタイトなモデル、ジャズ系は温かく繊細なモデルが適していますので、ジャンルに応じて候補を絞ると選びやすいです。
最終的には、実際に叩いてみることが最も重要です。
ペダルの踏み具合やセットでの鳴り方、周囲の楽器との調和を確認して、トップとボトムの組み合わせ、クラッチ位置を調整して最終決定してください。