ヒガンバナ(彼岸花)

デジイチ写真

 
ヒガンバナ(彼岸花)

ヒガンバナは、穏やかに秋の到来を知らせる入り口のような花です。
学名はLycoris radiataで、ヒガンバナ科のヒガンバナ属に属する多年生の球根植物として、東アジアに広く自生・栽培されています。

花茎の先端には、円を描くように開く6枚の花弁があり、優雅に反り返り、先端が風に揺れるたびに燃え上がるような鮮やかな紅を思い起こさせます。
最も一般的なのは深紅ですが、淡いピンクや真っ白、黄色やオレンジの改良品種もあり、色の変化に目が奪われます。

・花期:9月中旬、秋彼岸のころに葉を出さずに花茎のみが伸びて開花。
・花茎高:30~50cmで、先端に4~7個ほどの花が輪状に咲く。
・花被片:6枚で、しなやかに反り返り、長い雄しべと雌しべが大きく花の外に突出します。
・葉:開花後の10月から冬に細長い緑の葉を数枚展開し、春まで養分を蓄えてから枯れてしまいます。
・球根:直径約3-4cmの球根を地下で形成し、強い毒性を持っています。

これらの特性により、「花だけ先に見せ、後から葉を広げる」独特な生活サイクルを持っています。

ヒガンバナの最大の魅力は、そのユニークなライフサイクルにあります。
春から夏には葉を一枚も出さず、秋の彼岸が訪れると花茎だけを伸ばし、鮮やかな赤い花を咲かせ、花が終わると初めて細長い葉が地面を覆い、冬の間にゆっくりと球根に栄養を蓄えて休眠します。

「彼岸花」と呼ばれる名前は、秋分の彼岸に咲くことから仏事と強く結びつき、「彼岸の花」と呼ばれています。
別名には、サンスクリット語の「曼珠沙華(マンジュシャゲ)」をはじめ、「地獄花」や「死人花」など、その花が持つ妖しい魅力や神秘性を反映した多くの呼び名があります。

ただし、その魅惑的な美しさの背後には、強い毒性が潜んでいます。
全草にアルカロイド系のリコリンを含み、口にすると中毒症状を引き起こすおそれがあるため、子どもやペットの近くでは簡単に触れない配慮が必要です。

田畑の畦を華やかな紅で彩る群生は、大地に灯された無数の灯籠のようです。
夏の草が茫々と茂る風景が一瞬で変わるその対比は、見物人の心に深い印象を刻みます。

どこか哀愁を帯びつつ、力強い生命力を感じさせるヒガンバナ。
この花が一斉に咲く瞬間は、過ぎ行く季節との出会いを祈る瞬間でもあり、儚い美への賛歌のようでもあります。
その佇まいに心が揺り動かされるのは、自然と人間の営みが交差した長い歴史がこの花に刻まれているからでしょう。

関連記事

デジイチ写真

TOP
CLOSE