ラリー・カールトンの「ルーム335」

音楽事象

ルーム335」ラリー・カールトン
Room 335 by Larry Carlton
 
ラリー・カールトンの代表曲のひとつである「Room 335」は、1978年に発表されたインストゥルメンタルの傑作で、アルバム「夜の彷徨」に収録されています。
タイトルは彼が愛用するギブソンのセミアコースティックギター、ES-335に由来しています。
「335」はただのモデル番号ではなく、カールトンの音楽の象徴的なシンボルとなっており、ES-335のまろやかで温かいトーンとフレージングが「ルーム335」の雰囲気を形成し、聴衆は曲名を通じて演奏者の楽器のイメージや演奏する空間を思い描くことができます。

「ルーム335」の主旋律はシンプルでメロディックな感情に満ち、各フレーズの終わりに残る「余韻」が印象的であり、フレーズは静かな自信を持って展開し、聴き手の感情を無理なく引き込む構成になっています。

曲は単にブルースやループコードに頼らず、モーダルな色彩やジャズ由来のコード進行を効果的に用いて、ドラマを創り出しています。
ギタリスト向けの分析では、特有のコード進行とテンションの扱いが詳述されており、曲のモダンな響きを根付かせていることが説明されています。

カールトンのトーンは温かく丸みを帯び、ピッキングのダイナミクスやレガートの扱いが、ひとつのフレーズの中で精緻に変化します。
これが楽曲に「語るような」特性を与え、単なる技巧の披露にとどまらない表現力を生み出しています。

サウンドはギターを中心に、ベース、キーボード、ドラムがしっかりと支える小編成の形態をとっています。
ギターのポジショニングとリズム・セクションの息遣いが調和することで、メロディの「間」が際立ち、録音時のアンサンブル感やサウンド・バランスが楽曲の洗練を一層引き立てています。

静かな夜にヘッドフォンでじっくり聴いてみてください。
細やかなニュアンスが浮かび上がり、曲が持つ都市的な哀愁との落ち着きを深く味わえます。
ギター奏者ならコード進行の移り変わりやフレージングを追いながら、フレーズの造り方をメモして学びを深めることができるでしょう。
個々の聴取で新たな発見があるため、場所や時間を変えて繰り返し聴くことを強くお勧めします。

「ルーム335」は短い時間の中に豊かな感情と洗練されたハーモニーを詰め込んだ楽曲で、演奏の細部と全体の雰囲気が互いに支え合い、聴くたびに新たな表情を見せるのが魅力ですね。
 
ルーム335:ラリー・カールトン
 

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