二つの「ハートブレイカー/Heartbreaker」

音楽事象

真夜中のFM放送から流れ出したグランドファンク・レイルロードの「ハートブレイカー/Heartbreaker」は、シンプルで無愛想な3つのコードで始まります。
Bm–G–Aのリフがドン・ブリュワーのドラムによって切り開かれ、マーク・ファーナーのギターとボーカルが無骨に絡み合う…その最初のハーモニーが、観客の胸を強く掴む瞬間でした。
技術は控えめに抑えられ、その代わりに3人の一体感がギュッと凝縮されることで、このバンドの魅力が生まれています。
1970年代初め、中高生だった私はラジオに耳を傾けて、「これがアメリカのロックなんだ」と心臓を鷲掴みにされたことを鮮明に覚えています。

ステージでの演奏のエピソードも忘れがたいです。
ある地方の音楽祭で、まだ若かったファーナーがギターを引きずるようにして熱唱した後、アンプから「バリッ」と音が飛び出し、PAが一瞬真っ白になりました。しかしバンドは一切動じず、次の曲のリフに滑り込むように突入しました。
あの「壊れても意地で前に進む」姿勢こそが、「ハートブレイカー/Heartbreaker」の精神そのものです。
機材のトラブルすらもライブの一部にしてしまうその潔さが、聴く者に「音楽は生き物だ」ということを教えてくれました。

それに対して、レッド・ツェッペリンの「ハートブレイカー/Heartbreaker」は、まるで異次元のようです。
こちらは1969年にリリースされた『Led Zeppelin II』に収録されており、イントロのジョン・ボーナムによる豪快なドラムのフィルインが響き渡り、そのままジミー・ペイジのAブルース感溢れるリフへと滑り込む瞬間…まるで大地を抉るような重圧が空気を揺らします。
ヘッドバンギング必至のグルーヴは、リフの一音一音が体の芯に突き刺さるような痛快さを持ち合わせています。
シンプルなAブルース・フィーリングとは裏腹に、ソロパートはロック史上に残る超絶技巧で、今もなお語り継がれています。

あの艶やかなギターとジョン・ボーナムの重爆ドラムが合致した瞬間、音の壁が前方に迫ってくるようです。
曲の後半ではロバート・プラントのシャウトが火花を散らし、野獣が檻を破り捨てるような迫力を持ち、GFRとは異なり、ツェッペリンはスタジオの魔法を借りた巧みな一撃ですが、「壊す」パワーは同じ熱量で響いています。

両者を比較すると、グランドファンクは「三人の呼吸をそのままパッケージした生の爆発」、ツェッペリンは「録音技術と演奏が引き出した精密な破壊力」と表現できるでしょう。
どちらも「心を打ち砕く一曲」であり、聴くたびに「ロックとは揺さぶり続けることだ」と思い知らされます。

さらに、Pat Benatar や Duran Duran、Mariah Carey、Bee Gees など、多くのアーティストが「ハートブレイカー/Heartbreaker」というタイトルを選んでいるのも興味深い点です。
ドラマーとしては、ツェッペリンの録音技術を模倣して自分のフレーズを多重録音してみたり、GFRのようにアンプトラブルを逆手に取ってエフェクト遊びを徹底してみたりするのも面白い実験です。

次にバンドで演奏する時は、ぜひこの二つのHeartbreakerを並べて演奏してみてください。
壊れ方の質が異なる「壊し屋対決」が、きっと新たなグルーヴを生み出すでしょう。

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