危険物運搬の基準

危険物に関する法令

危険物の運搬とは、車両等(トラック等)によって危険物を運ぶことをいい、指定数量未満の危険物についても適用されます。

運搬容器

① 容器の材質は、鋼板、ガラス、プラスチック等が定められている → 陶器は使用できない

② 危険物は、危険性の程度に応じて、危険等級Ⅰなどの表示をすること。

〈危険等級〉(第4類のみを抜粋)
危険等級Ⅰ 第4類 特殊引火物(ジエチルエーテル、二硫化炭素等)
危険等級Ⅱ 第4類 第1石油類(ガソリン等)、アルコール類
危険等級Ⅲ 第4類 上記以外の危険物(灯油、軽油、重油等)
積載方法

① 原則として危険物は、運搬容器に収納して運搬すること。

② 液体の危険物は98%以下の収納率(固体は95%以下)であって、かつ、55℃で漏れないこと。

③ 運搬容器の外部に危険物の品名等を表示して積載すること。
記入しなくてよいもの:消火方法、容器の材質(プラスチック、ポリエチレン製)等

〈メチルアルコールの表示〉
危険物の品名 第4類アルコール類
危険等級 危険等級Ⅱ
化学名 メチルアルコール、水溶性
危険物の数量 18ℓ
収納する危険物に応じた注意事項 火気厳禁

④ 収納する危険物に応じた注意事項のポイント
第2類の引火性固体……火気厳禁
第4類 すぺて……………火気厳禁
第6類 すべて……………可燃物接触注意

⑤ 運搬容器等が転落、落下、転倒、破損しないように積載すること。

⑥ 運搬容器は、収納口を上方に向けて積載すること

⑦ 特殊引火物(ジエチルエーテル等)は、遮光性の被服で覆うこと。

⑧ 危険物を収納した容器の積み重ね高さは、3m以下

⑨ 同一車両で異なった類の危険物を運搬する場合に、混載禁止のものがある。

運搬方法

① 運搬容器に著しい摩擦、動揺が起きないように運搬すること。

指定数量以上の危険物を運搬する場含は、「危」の標識を掲げ「消火器」を備えること

③ 運搬中災害が発生するおそれのある場合は、応急の措置をして、もよりの消防機関等に通報すること。

危険物の運搬を行う場合、危険物取扱者の免状はなくてもよい
 

危険物の運搬を安全に行うためには、「どんな容器で」「どのように積み」「どのような体制で動かすか」という3つの観点から基準が細かく定められています。
これらは消防法などの法令で「危険物運搬の基準」として位置づけられており、違反すれば重大事故だけでなく法的な責任も問われます。また、危険物の貯蔵とは異なり、運搬については「指定数量の大小にかかわらず」規制が及ぶ点が実務上の重要なポイントです。

まず押さえておきたいのが「運搬容器」に関する基準です。
危険物と化学的に反応しない材質であること、運搬中の振動や衝撃に耐えられる強度・構造であること、転倒や落下により容易に破損・漏えいしないことなどが求められます。容器の最大容量や形状、口金や蓋の構造も細かく条件があり、簡易容器に入れ替える場合にも、これらの要件を満たさない容器は使用できません。
また、容器の外面には品名、危険等級、数量、注意喚起などを明示し、誰が見ても中身の危険性が認識できる状態にしておくことが義務づけられています。

次に「積載方法」に関する基準では、運搬容器をどのように積むかが具体的に数字を交えて規定されています。
例えば、容器の収納率(どの程度まで中身を入れてよいか)、積み重ね可能な段数や高さ、容器の向き(液体容器の口の向きなど)、荷崩れを防ぐ固定方法が代表的な項目です。
液体危険物については、温度上昇による膨張を見込んで内容率の上限が定められており、直射日光を避ける・熱源から距離をとるなど温度管理も求められます。固体危険物についても、収納率の基準や防湿・防水措置が必要になる場合があります。
さらに、異なる類の危険物を同じ車両に積む際には、反応性や危険性を踏まえた「混載禁止」の組み合わせがあるため、積み合わせ計画の段階で確認しなければなりません。

「運搬方法」の基準は、運搬全体の管理に関するルールです。
特に指定数量以上の危険物を運ぶ車両には、車両前後への標識掲示、運転者への危険物取扱いに関する教育、運搬車両への消火器などの消火設備や応急処置用資機材の備え付けが求められます。
万が一、漏えいや火災などの異常が発生した場合には、速やかな運搬の中止、周囲への危険周知、消防機関への通報などの対応が義務として定められており、「何か起きたらどうするか」を事前に手順化しておくことが重要です。
また、指定数量未満であっても、運搬容器や積載方法に関する基準は適用されるため、「少量だから規制外」と誤解しないことが必要です。

なお、これらの危険物運搬の基準は、消防法本体だけでなく、危険物の規制に関する政令、総務省令、告示など複数の法令・通知に分かれて規定されています。
扱う危険物の類・品名、運搬経路(陸上・水上)、運搬量によって適用される条文や細目が変わるため、実務では自社で勝手に判断せず、該当する法令文や技術基準を必ず確認することが不可欠です。
そのうえで、運送業者、荷主側の安全・保安担当者、場合によっては所轄消防署とも連携し、自社の実情に合わせた運搬マニュアルや緊急時対応手順書を整備しておくと、日常の運行管理と事故防止に大きく役立ちます。
 

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