物質の状態変化

基礎的な物理学および基礎的な化学

物質をつくり上げている最小の単位は原子で、その原子がいくつか結全したものが分子です。
そして、一般に分子がその物質の本来の性質を保っている最小の単位とされています。
物質を構成している原子・分子・イオンなどの粒子は絶えず運動していて、分子間力や電気的な引力などによって互いに集まろうとしています。これを粒子の熱運動といいます。

① 固 体

粒子が互いの引力によって規則正しく並んでいる状態で、一定の形を保ち、容易に体積や形態は変化しない結晶状態。

② 液 体

固体の温度が上昇するにつれて各分子の運動が激しくなり、粒子が不規則に集合している状態で、流動性があり、一定の形を保つことはできない状態。 体積はほぼ一定。

③ 気 体

液体の温度が上昇するとそれに応じて分子運動はさらに激しくなり、粒子がばらばらになって自由に飛び回っている状態で、一定の形や体積を保てない。

【物質の三態変化】
物質は、条件(温度や圧力)によって、固体・液体・気体に変化します。
これを物質の三態変化といいます。

・気体が液体になること(液化・凝縮
・液体が気体になること(気化・蒸発
・液体が固体になること(凝固
・固体が液体になること(融解
・固体が気体になること、気体が固体になること(昇華
【例】ドライアイス
潮解」 固体が空気中の水分を吸収して自ら溶ける現象。【例】食塩
風解」 固体の水分が蒸発して粉末状になる現象。
重要ポイント

①「蒸気圧が高い物質=空気中に広がりやすい物質」と捉える
危険物取扱者の試験では、液体そのものよりも「その液体から出てくる蒸気」がどれだけ危険か、という視点が重視されます。
ここで重要になるのが「蒸気圧」です。

液体は温度が上がると、分子の運動が活発になり、表面からどんどん気体(蒸気)として飛び出していきます。
このとき、液面のすぐ上で蒸気が押し返している力が「蒸気圧」です。

ポイントは次の2つです。
・温度が上がれば、分子がより飛び出しやすくなり、蒸気圧は増加する
・蒸気圧が高い物質ほど、空気中に可燃性蒸気がたくさん存在しやすく、引火点も低くなる傾向がある

つまり、「蒸気圧が高い=少しの熱でもよく蒸発する=可燃性ガスが周囲に充満しやすい」ということです。
危険物取扱者試験では、
・蒸気圧が高い物質ほど、引火・爆発の危険性が高い
・夏場や高温環境では、同じ物質でも危険度が増す

といった観点から、選択肢が作られます。

単に数値としての蒸気圧を覚えるのではなく、「蒸気圧が高い物質は、温度が上がると一気に気化して危険な混合気をつくりやすい」という、現場でのイメージと結び付けておくと理解しやすくなります。

②沸点で「常温の状態」を推理する
危険物が常温で液体なのか気体なのかは、その物質の「沸点」を見ればかなり判断できます。
これは、危険物取扱者の試験で状態変化を扱う問題を解くうえでの基本です。

・沸点が常温(およそ20〜25℃)より低い物質
→ 常温ではすでに沸点を超えているため、「気体」として存在しやすい
・沸点が常温より高い物質
→ 常温では沸点に達していないので、「液体」として扱われる

例として、
アセトン:沸点 約56℃ → 室内では液体として保管される代表的な危険物
プロパン:沸点 約−42℃ → 常温では気体なので、圧力をかけて液化し、ボンベなどに貯蔵する

このように、沸点を見るだけで、「この物質は常温ではどんな状態か」「どのような容器・設備が必要か」といった実務面まで連想できます。

危険物取扱者試験では、
「○○の沸点が△℃であるとき、常温での状態として正しいのはどれか」
「常温で気体である物質を選べ」
といった形で問われることが多いので、沸点と状態変化をセットで押さえておくと問題文から状況をイメージしやすくなります。

③固体なのに「いきなり気体」になる昇華性物質
状態変化というと「固体 → 液体 → 気体」という順番を思い浮かべますが、一部の物質は液体の段階を飛ばして、「固体から直接気体」になることがあります。これが「昇華」です。

危険物取扱者の勉強では、代表例として次のような物質が登場します。
ドライアイス(二酸化炭素の固体)
常温・常圧では溶けて液体にならず、直接二酸化炭素ガスを発生させる
ヨウ素
加熱すると紫色の蒸気となり、気体に移行する様子がはっきり観察できる

昇華する物質は、見かけ上は「減っているだけ」に見えても、実際には周囲に気体が増え続けている点が危険です。
・密閉された場所でドライアイスが昇華すると、酸素が希釈されて酸欠を起こすおそれがある
・換気が不十分な状態で昇華性物質を扱うと、知らないうちにガス濃度が高まり、健康被害や事故につながる

このように、物質の状態変化は「形が変わる現象」として覚えるだけでは不十分で、「どの状態でどんな危険が生じるか」「なぜその管理方法が必要なのか」と結び付けて理解することがポイントです。

試験学習の際は、
・蒸気圧 … 引火のしやすさ・危険物の広がりやすさ
・沸点 … 常温での状態(固体/液体/気体)の判断
・昇華 … 見えにくいガス発生源としてのリスク

といったように、それぞれのキーワードが安全管理上どんな意味を持つかを整理しながら覚えていくと、暗記に頼らず対応できるようになります。

 

関連記事

デジイチ写真

TOP
CLOSE