区分所有者は、建物の保存に有害な行為その他建物の管理又は使用に関し区分所有者の共同の利益に反する行為をしてはならない。
2 区分所有者は、その専有部分又は共用部分を保存し、又は改良するため必要な範囲内において、他の区分所有者の専有部分又は自己の所有に属しない共用部分の使用を請求することができる。この場合において、他の区分所有者が損害を受けたときは、その償金を支払わなければならない。
3 第一項の規定は、区分所有者以外の専有部分の占有者(以下「占有者」という。)に準用する。
自宅マンションを買った後、近隣とのお付き合いで悩んでいる話はよく耳にするところです。
上の階の騒音がうるさい、とか、隣の家から変なにおいがする、とか、決められた駐輪場に自転車を止めずにマンションの入り口に置く人がいて困っているとか。
一軒家でも隣近所とのお付き合いは大変です。
しかし、マンション等は壁一枚隔ててお隣の家ですし、よりトラブルの生じる可能性が大きいことはご想像いただけるものと思います。
そのため区分所有法弟6条では、区分所有者が他の区分所有者の共同の利益を害する行為をしてはいけないことを定めています。
また、建物の保存等を行うために、他人の専有部分や使用権のない共有部分への立ち入りをすることができます。水漏れの原因が配管にある場合、自室だけでは分からないことから、上下左右の部屋への立ち入り検査をさせてもらう場合が典型です。
この立ち入りによって、その入った先が損害を受けたときはそれを補償する必要があります。
ところで、マンションに住んでいる人は、持ち家として買った人もいれば、持ち主から借りて住んでいる人もいます。この住んでいるだけの人は、区分所有者ではなく、占有者、と法律では呼ばれます。
無断で住んでいる人がもしいれば、その人も占有者です。占有、が合法であろうがなかろうが、とりあえずそこに居る以上は、共同の利益に従って行動してくれないと困りますので、区分所有者と同じように占有者も共同の利益を害することをしてはいけないことに、区分所有法ではなっています。
◆共同の利益に反する行為
共同の利益に反する行為とは、一般的には、その行為の必要性の程度と、その行為によって他の区分所有者が被る不利益の程度や様子などの事情を考慮して判断されます。
共同の利益に反する行為には、専有部分に関する違反行為、共用部分に関する違反行為、そして債権関係に関連する違反行為が考えられます。
【1】専有部分に関する行為
専有部分に関する違反行為として、不適切な毀損や不適切な使用が挙げられます。
専有部分の増改築は、建物の基本構造の強度に影響を及ぼすリスクがあり、共同の利益に反する行為となる恐れが高いでしょう。
また、専有部分に重い物品や危険な物品を搬入することは、その危うさから共同の利益に反する行為と見なされます。
さらに、専有部分の使用目的を改める場合も、条件によっては共同の利益に反する行為とされることがあります。
【2】共用部分に関する行為
共用部分に関しても、不適切な毀損や不当使用が問題となります。
ベランダやバルコニーの改造、外壁や屋上の使用などが懸念されます。
【3】債権関係に関する違反行為
管理組合は各区分所有者に対して管理費請求権を有しています。
この債権に関連する区分所有者の義務である管理費の支払いを怠った場合も共同の利益に反する行為と見なされます。