第十八条(共用部分の管理)

(区分所有法)第一章 建物の区分所有
【第十八条】

共用部分の管理に関する事項は、前条の場合を除いて、集会の決議で決する。ただし、保存行為は、各共有者がすることができる。
 
2 前項の規定は、規約で別段の定めをすることを妨げない。
 
3 前条第二項の規定は、第一項本文の場合に準用する。
 
4 共用部分につき損害保険契約をすることは、共用部分の管理に関する事項とみなす。

 

解 説

管理に関する事項は大きく、重大な変更、重大ではない変更、保存行為に分けることができます。この内、重大な変更については17条に規定されています。
 
次に最も重要ではない保存行為については、民法でも、区分所有法でも、各自単独で行うことができます。保存行為とは現状維持のための行為、と言われます。車の例では、ガソリンを継ぎ足すことなど。マンションの場合には、廊下を掃除するとか、廊下の電気が切れたので付け替えるとか、いう場合です。誰かの了解なんていらない、という点はご納得いただけるでしょうか。
 
では重大ではない変更とは何かですが、性質を変えない範囲で利用したり、価値を増加させる行為とされています。具体的には、車であればシートカバーを買ってきてつける、マンションであれば廊下に新しく夜間灯を設置する、ということが挙げられます。
このような変更を行うことは基本的にはみんなにとっていいこと、のはずですが、費用も全員で負担することとなるのであれば、そこまでしなくてもいいのに、と思う人も当然出てきます。
そこで、民法では持分の過半数で決める、ことになっています。
一方で区分所有法も同じく過半数が原則ですが、区分所有者の過半数、議決権の過半数、の2つの過半数が必要です(この2つの要件が必要、という点は17条と同じです)。
 
なお、以上の点については規約に記載することで条件を変えることができます。過半数を更に少なくしてみたり、保存行為も同意を得てから進めるようにルールを決めたり、できるのです。それと、17条でもありました特定の専有部分の区分所有者に迷惑がかかる場合にはその人の了解を得ておく、というルールはここでも健在で、誰かに迷惑がかかる場合にはその人の承認が必要です。
 
最後に、共用部分に保険を損害保険を掛ける場合、この保険を締結すること、保険金を請求することはそれぞれ管理行為になります。その結果、過半数ほか、規約で定めた割合で承認されないと、手続きが進まないこととなってしまいます。

 

POINT

区分所有法第十八条では、「共用部分の管理に関する事項は原則として管理組合の集会決議で決定される」と明記されています。
つまり、廊下や屋根、外壁などの共通部分に関する方針や重要な管理判断は、区分所有者全体の意向によって決定されるのが基本です。

ただし、条文は「保存行為は各共有者が行うことができる」との例外を設けています。
保存行為とは、現状を保持するための点検・清掃・軽微な修繕などを指し、緊急事態や日常の手入れは個々の区分所有者が実施することが可能です。
一方で、管理規約に別途の規定を設ければ、理事会に権限を委譲するなど、集会決議を省略することも可能です。

実務上、損害保険の契約も管理に関する事項と考えられるため、保険加入は集会での議題となるのが一般的です。
また、区分所有者が管理組合の承認なしに独自に保存行為を行うと、規約や事情によっては違法と見なされることがありますので注意が必要です。(裁判例も存在します)

実務におけるポイントは「重要な管理方針は総会で決定し、日常の軽微な維持作業は規約や合意に基づいて柔軟に対応する」ということです。

 

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