敷地利用権を有しない区分所有者があるときは、その専有部分の収去を請求する権利を有する者は、その区分所有者に対し、区分所有権を時価で売り渡すべきことを請求することができる。
通常、建物は土地の上に建っています(当たり前ですが)。
つまり、建物には土地が必要なのですが、土地と建物の所有者がいつも同じとは限りません。言い換えると、他人の土地の上に建物を建てることが可能です。この場合には、土地を借りることになります。
一方、ほっといたら自分の土地に勝手に人が家を建ててる!という事態が起こった場合、その建物を撤去して欲しい、と請求するのは、あるいは自分で撤去する権利を有するのは、ごく当たり前のこととしてご納得いただけるのではないでしょうか。これが原則となります。
区分所有者は通常、敷地利用権を有しており、敷地利用権だけを分けて処分する(売り払う)ことはできません。しかし、特殊な事情で敷地利用権を喪失することがあります。
特殊な事情としてよく挙げられるのは、敷地利用権がもともと賃貸借でえあるところ、賃料を支払わないようなケースです。
この場合、その敷地利用権を取得した人は、建物を撤去して欲しいと請求したり、撤去したり出来るのが上記の原則の処理です。
しかし区分所有建物は、その一部だけを取り壊す、撤去する、ということが通常はできません。そのため、敷地利用権のない区分所有権は、敷地利用者が買い取ることができる、ことになっています。この際、価格は時価になります。
この買い取ることができる、は法律上の権利として敷地利用権を持っている人が、区分所有者に請求すれば、自動的に時価での売買が成立したことになります。契約のように合意する必要がない点が特徴的です。
敷地利用権は、原則として専有部分の区分所有権と密接に関連しています。
とはいえ、例外的にこの二つの権利が異なる人に帰属することもありえます。
規約によってこの両権利の分離処分ができるとされている「22条1項」但書の場合や、敷地が借地権である場合に、借地料の不払いなどを理由として借地契約が解除される場合があるのです。
また、敷地を底地単位で分筆し、専有部分と敷地利用権を分譲するタウンハウス形式の構造の場合には、区分所有権と敷地利用権の一体化の原則は適用されず、敷地利用権を保持しない区分所有者の存在も考えられます。
これらの状況下において、建物の一部に対して収去請求がなされると、その構造的な理由から、他の部分にも影響が及ぶ可能性があります。従って、区分所有者が敷地利用権を持たない場合、取り壊し請求権者は区分所有者に対し、時価で区分所有権を売却するよう求めることが可能となります。売却請求権は形成権であり、この請求があるだけで、区分所有権者と取り壊し請求権者の間に区分所有権の売買契約が成立し、区分所有権と敷地利用権が別個の人物に帰属している状態が解消されるのです。