製造所等の構造と設備の基準【2】

危険物に関する法令
屋内貯蔵所

【構 造】
① 地盤面から軒までの高さ 6m未満の平屋建 床は地盤面以上
② 床面積は 1000㎡以下

【貯蔵の基準】
① 容器の積み重ね高さ 3m以下(第3類、第4類、動植物油類は4m以下、機械により荷役する構造を有する容器の場合は6m以下)
② 容器に収納し、危険物の温度は 55℃を超えないこと

屋外タンク貯蔵所

【設 備】
① 液体の危険物を入れる屋外貯蔵タンクには、危険物の量を自動的に表示する装置を設けること。
液体の危険物(二硫化炭素を除く)の屋外貯蔵タンクの周囲には、防油堤を設けること。

防油堤の主な基準
防油提の容量はタンク容量の110%(1.1倍)以上とし、二つ以上のタンクがある場合には、最大タンクの110%以上であること。
② 防油堤には、その内部の滞水を外部に排水するための水抜口を設けること。
防油堤の水抜口は通常閉鎖しておき、堤内に滞油、滞水した場含は弁を開き速やかに排出すること。

屋内タンク貯蔵所

【構造・設備】
① タンクの容量 指定数量の40倍以下
        第4石油類、動植物油類以外の第4類危険物は20,000ℓ以下
(同一のタンク室に二つ以上のタンクがある場合は、タンク容量を合計した量)
タンク専用室は、屋根を不燃材料で造り、かつ、天井を設けないこと。

【無弁通気管の技術基準】
先端は、屋外にあっては地上4m以上、かつ、建築物の窓・出入口等の開口部から1m以上離す。
② 引火点が40℃未満の危険物については、先端を敷地境界線から1.5m以上離すこと。
 
【その他】
平屋建以外の建築物(地下3階、2階建て以上等)に設ける屋内タンク貯蔵所の基準
・引火点が40℃以上の第4類の危険物のみを貯蔵すること。
・窓は設けられない。

地下タンク貯蔵所

【設 備】
タンクの周囲4箇所に、危険物の漏れを検知する漏えい検査管を設けること。
第5種の消火設備を2個以上設けること。
 

製造所は単なる箱ではなく、そこで働く人と製品、そして地域を守るための「安全の設計図」です。
法令や基準が求める要件は一見事務的ですが、ひとつひとつが火災や有害物質の拡散を未然に防ぐための大切な役割を担っています。

不燃材料と耐火構造の使い分け
不燃材料の役割:延焼の恐れがない部分には不燃材料を採用します。
外壁や屋根、設備室の隔壁など、火が広がりにくい箇所に不燃材を使うことで、燃えにくい“骨組み”を作ります。
見た目は普通でも、その内側には火に強い素材が組み込まれています。

耐火構造の重要性:延焼の恐れがある部分、例えば危険物貯蔵庫や充填ライン周辺、可燃性作業場の境界には耐火構造が義務付けられます。
耐火構造は単に「燃えにくい」だけでなく、一定時間火の侵入を防ぎ、避難や初期消火に必要な猶予を生み出します。
これが被害を小さくする決定的な差になります。

窓の仕様と被害低減策
網入りガラスの採用:窓ガラスには網入りガラスが基準として挙げられます。
ガラスが割れても網が保持するため、火炎や破片の飛散を抑え、外部への延焼や内部への進入をある程度防ぎます。
機械室や薬品保管室の窓に用いることで、火災時の被害拡大を抑える設計になります。

窓まわりの二重対策:必要に応じて耐火シャッターや防火カーテンを併用し、窓自体が弱点にならない設計をします。
外から見えない配慮と迅速に閉鎖できる仕組みは、ひとつの安心につながります。

床の構造と有害物質管理
浸透させない床構造:床は危険物が浸透しない構造であることが重要です。
コンクリートの表面被覆や樹脂モルタル、化学的に耐久性の高いライニングなどを用い、薬品や油が床に染み込むのを防ぎます。
これにより地下水や排水系への流出リスクを低減します。

排水と二重防護:床面排水は閉鎖回路や中和槽に直接つなぐなど、万一の流出時にも拡散しないルートを確保します。
排水溝周りは段差や堰(せき)で囲い、流出を局所に留める設計が施されます。

設備配置と動線設計の工夫
火源と可燃物の分離:加熱設備や発火源は危険物貯蔵や揮発性物質の取り扱い場所から距離をとって配置します。
動線は最短で効率的である一方、緊急時に安全に避難できるように配慮します。

防火区画とアクセス:防火扉や区画は原則自動閉鎖で、点検や消火活動がしやすいようにアクセス経路を確保します。
巡回点検が習慣化されるような配置と表示も重要です。

日常点検と運用の意味
構造がいくらしっかりしていても、運用が伴わなければ意味が薄れます。
床のコーティングの劣化確認、網入りガラスのひび割れ点検、耐火扉の動作確認、排水経路の詰まり確認など、日々の目配りが初期の小さな不具合を大きな事故にさせません。
設計は守るための約束であり、点検はその約束を生かす行為です。

製造所の構造基準は、安全を形にした言葉の集合です。
見えない安心を積み上げる設計と、毎日の手入れがあって初めて、そこで働く人も地域も守られます。
 

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