きつねうどんのこだわり

日々是好日

小学校の時、寒い冬の朝礼が終わって解散する間際に、隣のクラスの友達が先生に百円札を手渡して「今日はお弁当が作れなかったので、お母さんがきつねうどんを出前してほしいと言ってます」と頼む場面を今でも覚えています。
先生は困りつつも受け入れ、その場に漂った暖かさと少しの後ろめたさが混ざった空気に、私は内心うらやましさを感じていました。
「きつねうどんやて~!たまらんわ~」と、自分もその香りにすがりつきたかったのです。

年月が経ち、高校の学生食堂が、2時間目終了後の休憩時間から利用できると知った時の嬉しさは格別でした。
メニューは、「きつね」「天ぷら」「天きつ(天ぷらときつねの略)」各うどん・そばの大・小、それに「カレーライス大・小」と、シンプルでしたが、お昼はいつも「天きつ」うどんの大を食べていました。
天ぷらは海老ではなくコリッとしたゲソ天で、これがまた美味かったのです!
(因みに2時間目終了後に食堂に食べに行った時は、10分しか時間が無かったので「きつねうどん」の小にしていました)
そんなこんなで、幼少の頃から「うどん」には目が無い私でした。

さて、既述の友達が先生に「きつねうどん」の出前を頼んだ話ですが、この出前を注文したお店は小学校のすぐ近くにあり、私も何度か「きつねうどん」を食べましたが、昆布や鰹節のだしに「いりこ」が効いていて、素朴に美味しかったです。
だしに「いりこ」をプラスすることで旨味の相乗効果、コクと香りの深み、栄養面の充実が一気にアップするらしいです。

思い返すと、あの頃の「きつねうどん」は味だけでなく、包装や器、配達の所作までもがセットになって記憶に残っています。
木製の丸いふたをそっと上げると白い丼に細い青い線が見え、三角の紙袋に入った七味唐辛子がちょこんと同梱されていました。
だしの香りと、七味のささやかな刺激が合わさり、一層深い旨味とほのかな辛みを引き立て、単なるアクセント以上の役割を果たしていたように感じられます。

このように、昔の「きつねうどん」は、技術・素材・サービス・器といったすべての面で細やかなこだわりがあり、その一杯に職人の情熱や地域の歴史、そして人々の温かい心が息づいていました。
今の時代にはなかなか味わえない、手仕事や温かい人情が生み出した唯一無二のシーンだと思います。

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