ドラムのトリプレット・ロックビートを探求してみる【1】

ドラム趣向
トリプレット・ロックビートの概要

トリプレットとは一拍を三分割するリズムで、ロックの四拍子に特有のうねりと推進力を加える要素です。
ドラムでトリプレットを用いると、ハイハットやライドの細かい「タタタ」という三連のビートが曲全体にスウィング感を与え、シンプルな4/4ビートに浮遊感とグルーヴの奥深さを付け加えることができます。

基本的な実践方法は、キックとスネアの「四拍子」を崩さずに、ハイハットやライドで三連を演奏することです。
右手で三連の最初の音を取り、左手やフットで2拍目と4拍目をしっかりと強調すると、四拍子の感覚と三連の動きが共存し、安定感を保ちながらもリズミックなグルーヴが生まれます。
キックを一拍目と三拍目に配置したり、スネアの裏拍に工夫したタッチを施すことで、よりロックらしい重心のある表現が実現できます。

練習方法としては、最初にメトロノームを四拍子に設定し、「タタタ」と声を出して三連を刻むことからスタートします。
次にハイハットで三連を続けつつ、キックとスネアで四拍子のアクセントを加え、徐々にテンポやアクセントの位置を変えてバリエーションを増やします。
スウィング感を引き出すために、三連の最初の音を軽く、中央と最後をわずかに薄く打つ練習や、アクセントを第2音や第3音に置くトレーニングを追加すると、応用が広がります。

実践的なフレーズの活用では、ブレイクやフィルで三連のフレーズを展開し、ギターやベースのフレーズと組み合わせることで曲全体のダイナミクスが一層豊かになります。
速いテンポでは16分三連の細かいビートを加えてメタリックな切れ味を表現し、中程度からスローでは8分三連の柔らかな揺れを生かしてエモーショナルな雰囲気を演出できます。

トリプレットを自然に操るためのコツは、四拍子の安定感を体にしっかりと身につけながら、三連の感覚を体に馴染ませることです。
日々の基礎練習に三連を組み込んでおくことで、曲中で違和感なく切替えができ、ロックのビートに奥行きと表現力を加えることができるようになります。

 

トリプレット・ロックビートの名曲

Honky Tonk Women」ローリング・ストーンズ
Honky Tonk Women by The Rolling Stones

「Honky Tonk Women」はミック・ジャガーとキース・リチャーズによる共作で、ローリング・ストーンズを代表する楽曲の一つです。この曲は1968年12月、ブリュッセルの牧場で誕生し、1969年7月4日にシングルとして世に送り出されました。発表直後から瞬く間に世界中でヒットし、イギリスやアメリカをはじめとする多くの国でチャートの首位を飾りました。

楽曲に流れるサウンドは、カントリーのエッセンスとブギーなロックが見事に融合しており、カウベルのリズム、力強いギターリフ、さらにミック・ジャガーのやや妖艶なボーカルが際立っています。作曲は、旅行中にリチャーズがメモしたアイデアを元に、ジャガーが具体化していくいつものプロセスで進行し、最終的にはバンド全員の演奏スタイルと外部ミュージシャンの協力が一体となり、独自のライブ感と土臭さを獲得しました。

制作においては、楽曲に初めて採用された5弦オープンGチューニングや、当時のメンバー構成の変化が全体のサウンドに影響を与えています。録音時には、初期のバージョンと後にアルバムに収められる別アレンジ(後年のアルバムやアウトテイクとして知られる「Country Honk」など)で表情が異なり、楽曲自身が何度も変容を遂げて、現在の完成形に至ったことが知られています。

歌詞は南部のバーで出会う女性たちや都会での出来事を軽妙に描写し、その率直で少々軽薄な語り口が楽曲のグルーヴに見事にマッチしています。バンドが取り入れたカントリーミュージックやR&Bのエッセンス、そしてジャガーのルーツ感あるボーカルが、一瞬で耳に残る「押し出しの強さ」を生み出し、これが長年にわたり愛される定番曲にしている最大の魅力です。

演奏においては、シンプルでありながら余白を巧みに生かしたアンサンブルが際立ちます。カウベルやリズムギターの刻みが楽曲の骨格を支え、その上に乗るジャガーのフレーズやギターの小さな装飾が曲に豊かな表情を与えます。リズムの“揺らぎ”と繰り返されるリフが聴く人を引き込み、ロックとしての野性味とカントリーの地に根差した感覚を同時に味わわせる点が、この曲の魅力となっています。

 
Honky Tonk Women:ローリング・ストーンズ
 

トリプレット・ロックビートlesson【1】

 

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