共用部分が区分所有者の全員又はその一部の共有に属する場合には、その共用部分の共有については、次条から第十九条までに定めるところによる。
区分所有法の11条により共有部分は原則として共有になります。この共有になった場合、共有されているもの(マンションの場合であれば廊下等)の使用、処分等に関するルールは民法に規定がなされています。
民法の共有が適用される場合を見てみるため、一例として、私が姉と弟と3人でお金を出し合って購入した車を考えてみます。この車は、三人の気持ちとしてもみんなのモノですが、法律的にも、民法の共有になります。
マンションの廊下と、兄弟の車との違いはたくさんありますが、先ずは誰が使っていいのか、から考えてみます。
車の場合、自分が使いたいときに誰かが使っていると使えないわけですから、いざ使いたいタイミングがバッティングした際にどうするか、を決めておくことは重要です。
これに関する民法のルールは、共有物は持分に応じて使用できる、です。持分とは、平たく言えば、そのモノを購入するのにいくらお金を出したのか、です。
姉が60万円、私が35万円、弟が25万円をそれぞれ出し合って車を買ったのだとすれば、姉が半分は利用できることになります。何を持って半分なのか、は難しいのですが、毎週土曜日の夜は3人とも友達と遊びに行きたくて車を使いたいとすると、月の半分は姉が、のこりの土曜の夜を私と弟が一回ずつ、ということになります。
ではマンションの廊下はどうかと言うと、持分に応じて使用するのはなじまないです。今月はたくさん廊下を歩いたからもういいよね、と言われてしまうと家に帰れませんし。
これは一例ですが、民法の共有をそのまま使う場合にはいろいろと困難があります。
そのため、区分所有法では民法の共有に関するルールに対して、より優先して適用される特則を13条以下で規定しています。
区分所有法の第十二条は、マンション等の共用部分の「誰が共有しているのか」をはっきりさせるための出発点です。
共用部分が区分所有者全員の共有に当たるのか、それとも一部の区分所有者だけの共有にとどまるのかをまず定めることで、その後に続く第13条から第19条までの管理・使用・変更に関する具体規定の適用範囲が決まります。
言い換えれば、第十二条は共用部分に関するルール適用の基準線であり、実務上の判断がここで止まるか進むかを左右します。
実務的には、共用部分(たとえば廊下、エレベーター、屋根、外壁といった典型的な共用施設)について「全員共有か一部共有か」をまず点検します。
全員の共有であれば民法上の共有と近い枠組みで扱い、限定された区分所有者のみが共有する場合はその範囲に応じて第13条〜第19条の適用を調整します。
この整理が明確でないと、修繕費の分担、専用使用の可否、改装や変更の決議要件といった場面で混乱や争いが生じやすくなります。
区分所有法の第十二条を出発点にする具体的手順としては、登記や管理規約、過去の総会決議書等を確認し、共用部分の帰属を文書で明確化することが重要です。
判断が難しい場合は建物図面や共有持分の状況、管理規約の定め方を踏まえ、専門家(弁護士や管理士)に相談して法的解釈や運用方針を整理すると実務上のリスクを減らせます。
また、第十二条で帰属が確定すれば、管理組合は第13条以降の枠組みを基準に修繕計画、費用負担、専有部分との境界にかかる取り扱い、専用使用権の許可手続きなどを進められます。
近年は所有者不明や高齢化、法改正の検討といった課題もあり、区分所有法の第十二条→第13条以降の運用が一層重要になっています。
実務では、議論の冒頭で第十二条の該当性を確認し、その判断を総会議事録や管理文書に残すことが推奨されます。
こうした手続きを踏むことで、共用部分に関わる紛争予防と透明性確保につながり、管理組合の適正な運営が実現します。