第十五条(共用部分の持分の処分)

(区分所有法)第一章 建物の区分所有
【第十五条】

共有者の持分は、その有する専有部分の処分に従う。
 
2 共有者は、この法律に別段の定めがある場合を除いて、その有する専有部分と分離して持分を処分することができない。

 

解 説

民法上、自分の物は原則として好きに処分することができます。これに対して、共有物を、勝手にその共有している一人が売却することはできません。くどいように繰り返しますが、兄弟3人で購入した車を姉が勝手に売り飛ばすことは許されません。
しかし、もうこの車は自分にとっては必要ない、ということがあります。例えば、弟が海外の大学に留学することになり、少なくとも数年は帰ってこないつもりであった場合、車を売って少しでも現金を手にしたい、と思うのは自然なことと言えます。
そこで、この場合には、持分を売ることができることとされています。毎週1日乗れる権利と洗車代他を月に1万円積み立てる義務を友人、親、家族に売ったりすることができます。これは、既に持分をもっている私や姉に売ることも可能、誰に売ることもできます。
 
マンションの場合、共有部分である廊下に関する権利を、マンションの住人の一人が売却するといろいろと問題があります。例えば、廊下に亀裂が入り、修理が必要な場合、専有部分を持っていれば自分もそこを通るので修理が必要と言う話に納得してもらえるものの、実際に専有部分を持っておらず住んでいない人は修理に反対するかもしれません。
このような問題を避けるため、共有部分の持分は専有部分と一緒にしか処分されず、また必ず一緒に処分される、ということとされています。
 
ただ、区分所有法自体に、このルールとは異なる決まりが書かれており、その場合にはそちらが優先されることとされています。こちらは後ほど、該当の条文のところで別途ご説明させていただきます。

 

POINT

区分所有法第十五条は、マンションなどの建物で「共用部分」の持分がどのように扱われるかを定める重要なルールです。
ここで言う共用部分とは、廊下や階段、屋根、外壁、エレベーター、庭など、特定の一人だけが利用するのでなく、みんなで利用する区域を指します。
第十五条はシンプルに言えば、「共用部分の持分は専有部分(各自の部屋)に付随して扱われる」という原則を定めています。以下、要点を順を追って説明します。

まず第一に、共用部分の持分は基本的に各専有部分の床面積などに基づいて決まります。
つまり、広い部屋に住んでいる人は共用部分の持分も大きくなりやすいということです。
これは負担の公平さを維持し、管理費や修繕費の配分に繋がる合理的な基準となっています。

次に重要な点は「独立して処分できない」という原則です。
共用部分の持分を専有部分から切り離して単独で売却したり譲渡したりすることは原則として認められません。
というのも、共用部分の所有権が分散すると、管理や修繕に関する意思決定が複雑化し、共有者間の対立や管理ができなくなるリスクが高まるからです。
共用部分は「建物全体の一部として統一的に管理されるべきもの」と見なされているため、専有部分と関連付けて持分が扱われます。

しかし、例外がまったく存在しないわけではありません。
管理規約によって異なる定めがある場合や、共同管理組織(管理組合)の合意に基づいて特別な取り扱いが定められている場合など、個別の状況に応じた扱いがなされることもあります。
そうした場合でも、変更手続きや合意形成のハードルは高く設定されていることが多く、軽率な持分の分離は通常困難です。

実務的に留意すべき点として、まず管理規約と登記簿を確認することが挙げられます。
管理規約は共用部分の範囲や持分の計算方法、持分変更の手続きを具体的に定義していることが多いため、処分や相続、売買を考える際はまず目を通すべき重要な書類です。
登記簿には各専有部分の面積や共用部分の持分が記載されているため、名義変更やトラブル回避のためにも確認しておくと安心です。

また、共有物分割請求のような民法上の手続きと区分所有法の仕組みが交差する場面もあります。
民法上では共有物の分割が原則として認められることもありますが、区分所有法は共用部分を専有部分に付随させることを前提としているため、単純に分割請求が成功するとは限りません。
こうした複雑なケースでは、法律の専門家に相談し、規約・登記・実務慣行を総合的に検討する必要があります。

第十五条は「共用部分の持分は専有部分に結びついており、自らの判断で切り離して処分することは原則としてできない」と定める規定です。
これは管理の安定と公平な負担配分を確保するための仕組みであり、具体的な取扱いは管理規約や登記の内容、管理組合の合意によって変わります。
共用部分の取り扱いに迷った際は、まず規約と登記簿を確認し、必要があれば管理組合や専門家と相談することが安全です。

 

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