ジョン・レノンの「ウーマン(Woman)」は、彼のソロ作品の中でも、とりわけ“愛”というテーマに真正面から向き合った楽曲として語り継がれています。
1980年発表のアルバム『ダブル・ファンタジー(Double Fantasy)』に収録され、パートナーであるオノ・ヨーコに宛てたラブレターのような一曲ですが、それは単なる夫婦の愛を超えて、「女性」という存在そのものへの賛歌としても受け取れる内容になっています。
この曲でジョンが歌っているのは、ロマンチックな愛情表現にとどまりません。
女性という存在が、自分の人生にどれほど大きな影響を与え、支えとなり、導いてくれたのか、、その「気づき」と「感謝」が核になっています。
冒頭から彼は、女性の存在が自分の生き方に意味と方向性を与えてくれたことを静かに告白し、聴く側も思わず自分自身の大切な人の顔を思い浮かべてしまうような、普遍性のあるメッセージへと昇華させています。
音楽的には、ピアノとストリングスを中心とした柔らかなサウンドが印象的で、過度な装飾を避けたシンプルなアレンジが、歌詞の温もりをいっそう引き立てています。
メロディラインは穏やかでありながら、サビに向かって少しずつ感情が高まっていく構成になっており、聴き手は知らず知らずのうちにジョンの告白に寄り添い、共感してしまいます。
まるで、耳元で静かに語りかけられているかのような親密さが、この曲ならではの魅力です。
「ウーマン」が特別なのは、理想的な愛だけを描いていないところにあります。
ジョンは自分の未熟さや過去の振る舞いにも目を向け、傷つけてしまった相手への謝罪や後悔を隠さずに歌い上げています。
「ときどき君を傷つけてしまった」というニュアンスの言葉には、完璧ではない一人の人間としての弱さと、それでも関係を大事にしていきたいという決意が同居しています。
そこに、ロックスター“ジョン・レノン”ではなく、一人のパートナーとしての等身大の姿が浮かび上がり、聴く人の心に深く響くのです。
さらに、この曲はジョン・レノンの死の直前に世に出たシングル曲としても知られています。
その事実を知ったうえで聴くと、一つひとつのフレーズがまるで「最後のメッセージ」のように感じられ、愛や感謝を生きているうちに伝えることの重さをあらためて考えさせられます。
ジョンが生涯を通して訴え続けた“愛と平和”というテーマが、最も個人的で親密な形で結晶した楽曲が「ウーマン」だと言えるでしょう。
静かに寄せては返す波を眺めているような、やわらかくも切ない余韻を残す「ウーマン」。
聴き終わったあと、心のどこかがそっと撫でられたような感覚が残り、「大切な人に、ちゃんと言葉で感謝を伝えたい」と思わせてくれる一曲です。
ジョン・レノンの作品群の中でも、最もパーソナルでありながら、時代や国境を越えて共感され続ける名曲として、今も多くの人の心を照らし続けています。
「ウーマン/WOMAN」ジョン・レノン/John Lennon(YouTube)
「ウーマン/WOMAN:ジョン・レノン/John Lennon」