電気の不導体(不良導体)や絶縁体(=電気が流れないもの)を摩擦すると、その物体に静電気が発生し 帯電します。
静電気が蓄積すると火花放電を起こし 点火源となります。
① 静電気は、固体、液体、気体、人体等に発生し帯電する。
② 不導体(不良導体)や絶縁体のほうが静電気が発生しやすい。電気の流れない物質に発生し帯電する。
③ ガソリン等(非水溶性)は発生し、水溶性のアルコール等は発生しない。
④ 湿度が低い(乾燥している冬季等)ほど静電気が発生しやすく、蓄積しやすい。
⑤ テトロンやポリエステル等の合成繊維や毛糸は、木綿より静電気が発生しやすい。
⑥ 流速が速い場合や流れが乱れると、静電気が発生しやすい。
⑦ 静電気が蓄積すると火花放電して点火源となる。
| 静電気が 発生する 蓄積する |
不導体、不良 導体、絶縁体 という |
化繊=合成織維(テトロン・ポリエステル等)・毛糸 ガラス、プラスチック ガソリン・灯油・軽油・ベンゼン等の第4類の危険物 |
| 静電気は 発生しにくい 蓄積しにくい |
導体、良導体 という |
鉄・銅・アルミニウム・銀・金などの金属や水等 エチルアルコール・アセトン(水に溶ける)等の第4類の危険物 |
※静電気の蓄積(帯電)を防ぐには?
・伝導性(電気が流れる)の大きい物質を使用する。
・電気絶縁性(電気が流れない)の大きい物質を使用しない。小さなものを使用する。
静電気は「見えない点火装置」
危険物を扱う現場では、静電気はマッチやライターと同じレベルで危険視される「着火源」です。
特に第4類危険物(ガソリンやアルコールなどの引火性液体)では、静電気が原因と考えられる火災・爆発事故が多数報告されています。
目に見えず、放電も一瞬で終わってしまうため、「発生させない」「蓄積させない」「安全に逃がす」という考え方で対策を組み立てることが基本になります。危険物取扱者試験でも、この考え方が土台として問われます。
1. 静電気はどんなときに生まれるのか
静電気は、二つの物体が接触・摩擦・分離することで電荷のバランスが崩れたときに発生します。
危険物の現場で典型的なのは、次のような場面です。
・可燃性液体をタンクや容器に注ぐとき
・ポンプや配管、ホースで液体を移送するとき
・ドラム缶や容器を布やウエスでふき取るとき
・ナイロンなどの合成繊維製の作業服同士がこすれ合うとき
特に空気が乾燥していると、発生した静電気が逃げにくくなり、物体や人体にどんどん蓄積されます。
冬場や空調で湿度が低下した室内は、静電気災害が起きやすい典型的な条件であり、危険物取扱者試験でも「低湿度」「乾燥状態」はキーワードとして頻出です。
2. 引火性液体と静電気が組み合わさるとどうなるか
静電気が恐れられる理由は、放電の瞬間に「火花」が飛ぶ点にあります。
一見すると小さな火花ですが、可燃性蒸気と空気の混合気体が「爆発範囲(可燃限界)」の濃度にあると、わずかな火花でも着火エネルギーとして十分です。
危険度が高い代表的な「第4類危険物」として、以下のような物質が挙げられます。
・ガソリン
・トルエン
・キシレン
・アセトンなどのケトン類
・灯油・軽油(蒸気圧は低いが、温度や条件によっては危険)
これらは、比較的低温でも蒸気を発生しやすく、タンクや作業場の周囲に引火性蒸気がたまりやすい性質があります。
危険物取扱者試験では、「静電気による点火の危険が特に大きいものはどれか」「爆発範囲が広いものはどれか」といったかたちで問われることが多く、物質ごとの性質と関連づけて覚えることが重要です。
3. 静電気対策の基本戦略:3つの視点
静電気対策は、設備・器具・作業方法を含めた「総合設計」として考える必要があります。
実務でも試験でも、次の3つが柱となります。
(1)接地(アース)で電気の逃げ道をつくる
金属タンク、配管、ポンプ、ドラム缶など、帯電しやすい金属部分は、確実に接地(アース)しておきます。
接地することで、たまった静電気を地面へ逃がし、電位差が大きくならないようにします。
危険物取扱者試験の選択肢で「静電気対策として最も有効な方法はどれか」と問われた場合、多くの場面で「接地」が正解に直結します。
(2)導電性や帯電防止機能をもたせる
ホースや容器を絶縁性の高い樹脂製のものにすると、静電気がたまりやすくなります。
そのため、危険物施設では次のような配慮をします。
・導電性ホース、導電性容器の使用
・帯電防止処理されたタンクライニングやライナーの採用
・作業者に帯電防止靴を着用させ、床材も導電性・拡散性のあるものを選ぶ
これにより、発生した静電気を一点に集中させず、ゆっくりと拡散・放電させることができます。
(3)湿度管理で帯電そのものを抑える
空気中の水分が多いと、表面にたまった電荷が空気中を通じて少しずつ逃げていくため、帯電しにくくなります。
危険物施設では、室内の相対湿度をおおむね60%以上に保つことが望ましいとされています。
危険物取扱者試験でも、「静電気防止の観点から望ましい湿度の目安」として、この数値が問われることがあります。
4. 液体の扱い方で静電気の量が変わる
同じ液体でも、「どう移送するか」によって静電気の発生量は大きく変わります。
特に注意したいのは、注入速度と流れ方です。
・高速で液体を注入・移送する
・液面より高い位置から自由落下させる
・液面に勢いよく衝突させる
こうした操作は、液体と空気、容器壁との摩擦を増やし、帯電量を一気に高めます。
そのため、安全な危険物の移送では、次のような工夫を行います。
・できるだけゆっくりと注入する
・ホースの先端を液面下に入れて注ぐ
・ポンプの能力やバルブ開度を調整し、急激な流速変化を避ける
危険物取扱者試験では、「急速な注入・移送は静電気発生の原因となる」といった記述の正誤を判断させる問題がよく出題されます。
5. 作業者自身も「帯電源」になりうる
静電気は設備だけでなく、人にもたまります。
特に次のような服装・装備は要注意です。
・ポリエステルやナイロンなどの合成繊維製作業服
・ゴム底で導電性のない一般的な安全靴
・絶縁性の高い手袋
危険物を扱う作業者には、原則として次のような対策が求められます。
・綿100%または導電性繊維を織り込んだ作業服の着用
・帯電防止靴・帯電防止手袋の使用
・接地されたフロアや導電性マットの上で作業する
こうした対策により、作業者の体に静電気がたまりにくくなり、タンクや配管に触れたときの放電火花のリスクを減らせます。
6. 「見えない危険」は仕組みでコントロールする
静電気は、音もなく、目にも見えずに蓄積され、意識しないうちに放電してしまいます。
だからこそ、「気をつける」だけでは不十分で、次の3つをセットで整えることが不可欠です。
・設備:接地、導電性材料、帯電防止処理
・環境:湿度管理、換気、危険物設備の構造
・作業手順:ゆっくり注入する、適切な服装で作業する、危険物ごとの性質を理解して取り扱う
危険物取扱者試験では、単に「静電気は危ない」と覚えるだけでは得点につながりません。
「なぜ危ないのか」「どの条件で危険度が高まるのか」「どの対策が最も有効か」を、具体的な現場のイメージと結びつけて理解しておくことが重要です。
静電気の特性と対策の原理を押さえておけば、試験問題の多くは応用で解けるようになりますし、実務でも「見えない着火源」から職場を守ることができるようになります。